○突っ立ってるだけでも……
ただ、人が立ってるだけの簡単な構図。人物を描く上で、最もベーシックな構図。
それが所謂『立ち絵』だったりします。
しかし、しっかり地に足を付けて、真っ直ぐ立っている構図を貴方は描けますか?
……意外と、これが出来ない人が多いんですよ。特に、ファンアートから絵の世界に入った方に、この傾向は顕著に見られます。
好きな絵を模写するのは良い、でも、猿真似だけで満足できる人はまず居ない。
好きなキャラの顔だけ模写してそれで満足ですか? 楽しいですか?
どうせだったら自力で全て描けるようになりましょうよ。その方が絶対に楽しいですから。
○立ってるだけなんて、簡単じゃないか
……とか思っている貴方! 甘い、甘いっスよ! 激甘です。
ジャンボパフェにチョコレートソースたっぷり掛けて食ってるのと同じぐらい甘いです。
……大袈裟ですって? なら描いてみてください、お手本無しで、ビシッとカッコよく立っている人物の姿を。
どうです? 描けますか? 自信を持って『描けるよ』と言えますか?
そう問われて『描けるぜ』と言い切る素人さんほど、実際に描いてみて出来上がった絵は
『これじゃ立ってるように見えないよ』
なモノになっている事が多いのですよ。
……さて、意地悪はこれぐらいにして。初級レクチャー、始めさせて頂きます。
基礎の基礎ですからね、しっかりマスターして下さいね。
ハイ、小学生の落書きでお馴染みの骨人形君ですね。これでキャラの骨格を表現します。
どうです、これだけでも『立っている』感があるでしょう?
しっかりとした構図を取れば、たったこれだけでもそれらしく見えてしまうものなんです。
因みに、足許に赤い▲がありますが、この地点がこのキャラの重心位置になります。
これを無視すると、キャラは地面に立てないのです。
あ、誤解しないでくださいね。『キャラの中心=重心位置』ではありませんからね。
各関節の位置が決まったら、今度は肋骨と骨盤の形を形成してやります。
ここまでで、大体キャラの体格も決まって来ますね。
あ、肋骨や骨盤の描き方はこれを真似しなくても良いですよ。好きな形で描いて結構です。
そして、首の付け根から股間まで一本の線が引かれていますね。これが『正中線』、体を正面から見た際に
中心となる線の事です。つまり、ヘソの位置もこの線上に来る事になりますね。
肋骨と骨盤が描けると、胸板と腰のラインが決まるので、そこを元にして胴体を描いてやります。
ここで注意して欲しいのが、お腹やお尻のラインをキチンと決める事。斜め正面からの構図でも、尻のラインは見えるものです。
で、胴体が描けたら腕と脚を骨格に添って形取り、肉付けを行いましょう。
この行程はある程度の熟練が無いと綺麗な形には描けませんが、最初から上手く描ける人なんて居ないんです。
※ちょっとコツ!
胸の上部を中心に、肩の付け根に掛けて線が引かれ、三角形を形成してるのが分かるでしょうか?
これは鎖骨のラインです。これをこの時点で描いておくと、肩の付け根の位置がズレにくく、安定した形に描く事が出来ます。
完成後の描画でも鎖骨が無いと『あれっ?』となってしまうので、これは必ず描くようにしましょう。
大体の人型が描けたら、骨格と肋骨・骨盤のラインは消してやりましょう。
けど、ちょっと待って。この人は男なの? 女なの?
……それは最初から決めておきましょうね。男女では肩幅も腰の形も、ヘソの位置すら変わるんですから。
私はこのキャラを『女の子』として描いていました。
『胸ないじゃん!』……慌てなさんな。ああいう部分は、基礎の形がキチンと出来上がってから追加した方が良いんです。
つまり、土台になる胸板がしっかり描けていないのに、乳房を乗っけたってバランス取れないでしょ?
物事にはすべて順序ってものがあるんです。プラモだって塗料を塗る前にデカール貼る馬鹿は居ないでしょ? それと一緒です。
ハイ、できあがり。
どうです? ただ『立っている』だけの構図でも、キチンと描くにはこれだけの手間暇が掛かるんです。
模写が幾ら上手くたってダメだよ、って事です。
あと、顔だけ上手く描けるから自分は絵が上手い、と思ってるアナタ! それは大きな誤解です。
全身図を、様々な格好で満足に描けて、初めて『上手い』と言えるのです。
無論、私だって胸を張って『上手い』と言えるレベルではありません。しかし、昨日今日絵を描き始めた人よりはマシだと思ってますよ。
さて、これを始まりとして、人物と背景の描き方についての講座を何段階かに分けて行います。
やや上から目線の物言いになりますが、その辺は『教える側』『教わる側』の立場の違いと割り切って下さいね。